「汚れた顔の紳士達」はノンフィクションかフィクションか
- cordial8317
- 2024年4月12日
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ライフワークブログの「汚れた顔の紳士達」の元となる短編小説を上梓したのは、今から約16年前の第50回国民体育大会福島秋季大会が行われる頃だった。
遡ることその約1年前、愚生とヨークベニマルとの間でチョッとした諍いが起こり、ベニマル側の対応に納得出来ず、地元や世論にその是非を問うべく、当時ヨークベニマルの社長であった大高善兵衛へ猛省を促そうと街宣活動を行う事態となった。
以来、約5ヶ月の間、ベニマル本社や郡山商工会議所やら、市内一円を隈無く街宣活動を展開した。最終的には郡山商工会議所の会員2人(篭谷社長、神田社長)と酒類卸業の三瓶社長らが仲介し、ホテルハマツで大高社長との和解が成立した。
その和解条件は、ベニマルとの確執の原因となった元福島県警幹部の解任と大高氏からの謝罪と社長の辞任だった。大高氏は「色々と申し訳有りませんでした。もう既に元署長は解雇しました。私は商工会議所の会頭になるので、社長は近々に弟(善二郎)に譲ります」と、飄然として愚生の提示した条件を呑んだ。
和解後、仲介した3人とホテルハマツの裏手に在る鮨屋「だるま」へ移動し酒を酌み交わした。神田社長らは、「今日はホント有難うございます。この埋め合わせは必ずしますので」と、後日の協力を確約し、愚生も強かに呑んで店を後にした。
その後、この三人からは梨の礫。そんな折、篭谷社長の会社が経営不振に陥り夜逃げした。夜逃げした数日後、篭谷社長が東京の愚生の田園調布の事務所を訪れた。
突然の訪問に驚くも、田園調布の寿司屋「船八」へ、幹部や若い隊員数人も同道しての一献となった。篭谷社長は、元陸上自衛隊のレンジャー上がりで、がたいはデカイが下戸で、夜逃げした心労も重なってか直ぐに酔いが廻って色々と喋り出した。
「佐久間さんに献金をしなきゃと思い、陣屋に会員制のバーを開き、その奥に『麻雀クラブ』を創り、大高さんの口利きで会員を集め、その会費を毎月、佐久間さんに渡すつもりで進めたんですが、思った様に会員が集まらなくて・・・」
「大高さんや神田さん、三瓶さん、鈴木さん(事務機屋社長)らは麻雀が大好きで、連日、神田さんのマンションに集まっては賭け麻雀をやってますよ。俺も何人かには負けてるんですが、貰える分も少し(笑)」と、暴露話や時局やらで談論風発。
その頃は、オウム真理教が事件を起こし、「ポア」という言葉が流行ってて、「サリン手に入らないですかね。ポアしたいヤツがいるんですよ」ってなことも。
「そりゃ誰よ?」「富塚(山東ビル)ですよ!」という。愚生は冨塚という人物とは面識は無かったが、不動産業や金貸しで有名で名前だけはよく知っていた。
その後、富塚は「あぶくま健康ランド」といったバブリーなセンスの無い施設などが原因となって経営不振に陥り、結局は倒産し、体調も崩し亡くなったらしい。
酔いも廻って来たので事務所へ戻り「今日は泊まって行けば」ということになり、愚生は先に床に就く。だが、隣の部屋から聞こえて来る怪しげな会話に耳を欹てると、何やらクスリ好きな幹部の久山とマリファナの話しで盛り上がっていた。
「マリファナやって女とやると気持ちいいですよねぇ」と篭谷社長。
「そうなんですよ。でも最近良いのが無いんですよねぇ」と久山。
「何なら今度上げますよ。今仙台の女子大生と付き合ってるんですが、そこに塊り(マリファナ樹脂)が有りますから」と篭谷社長。
「ホントですかぁ」と久山の嬉しそうな声。
この幹部の久山は後に薬物で逮捕された。所属していた団体の恥にもなるのでこれ以上の遣り取りは割愛するが、酔ぱらった勢いからか、大高社長や神田社長、三瓶社長らのスキャンダラスな話を得意気に話していたのを今でも覚えている(笑)
翌朝、郡山市の坂上研二建設社長が郡山署に告発した件や、郡山駅中でやっていた携帯電話店の契約金800万円の取立てを愚生に依頼して何処かへ消えて行った。
その後、郡山へ戻り、商工会議所で大高社長と会い、坂上ら関係者と会いその事後処理を講じていた矢先に、愚生が「尿管結石」で入院する羽目となってしまう。
入院中に、やることもないので、今迄の篭谷遁走の経緯を小説風に書き上げた。原稿用紙で約180枚、三日足らずで書き上げて印刷所で製本した。そのノンフィクションが「汚れた顔の紳士達」である。300部発効したが原稿込みで即日完売(笑)
当時の冊子は手元にはないが、中々の出来だった様に思う。売らないで福島県文学賞に応募していたら、県ノンフィクション大賞くらい受賞していたかもなぁ。
その後、夜逃げした篭谷社長へ3000万円を貸付した坂上建設も、放漫経営から数年前に倒産した。この坂上社長、若い頃は暴走族として暴れていたそうだ。その若かりし頃に覚醒剤に手を出し、そのことで横浜の某右翼団体から脅された。
何も若い頃の悪事など放っておけば良いものを、地元の右翼の重鎮、大日本愛国党の芦名昇盛が事を荒立ててしまった。坂上建設の下請け企業で「エム・ケンソー」という会社が在った。この会社も坂上の倒産で吹っ飛んだが、この遊び人の社長が芦名議長と知り合いで、それが縁で芦名議長の登場となったのだという。
「そりゃ大変だ。よく、地元の団体にバレなかったねぇ」と芦名議長
「いや、地元で佐久間五郎に嚇されてます」と坂上ら
「えっ、どういうことで」と芦名議長
「実は、こないだ夜逃げした篭谷へ3000万円を貸付けたんですが、ゴルフの会員権やら担保にしているのだから、詐欺には当たらないし、訴えを取り下げろと、第三者を介して、佐久間が言って来たもんだから、つい『佐久間はオレの前の女房を寝取った男なんだ』とウソを吐いてしまいまして・・・」と坂上ら。
困ったのは芦名議長、愚生が芦名議長の言うことなど聞かないのは百も承知。結局、右翼の横山武彦が愚生との仲介役となり、坂上との和解が成立した。
和解の為に連絡をくれた横山は、愚生と会うなり、「まぁ女を寝取った、寝取らないの話しだし、ここは一つオレに任せろ」との第一声に唖然とする。
「何よそりゃ、坂上とはそういう問題じゃないんだが、横山さんが登場したんじゃしゃあないわな。ところで、横浜の右翼は何で坂上をやってるの」と聞く。
「何か、シャブをやってた人間が公共工事に携わるとは何事かということらしいわ」
「へぇ、何も若い頃だし関係ないでしょ(笑)、それにシャブの件なら昔、大越興業の大越興治社長が間に入って和解してますよ。坂上も同じネタで2回も脅されてりゃ世話ないわ。まぁシャブだけにネタが尽きない、なぁんてね(笑)」
「え、大越が入ったってホントかそりゃ。まぁオレは、佐久間との仲裁と横浜の団体への和解金を運ぶだけで小遣い貰えるし、前のことなんかどうでもいいわ」と横山。
「坂上もバカだよなぁ、最初から自分に相談すりゃこんなことにはならなかったのに、それにしても芦名議長も何やってんだか(爆)」 と相成った。
その後、横山が横浜の団体との和解の為に上京し、愚生らが街頭演説をしている新橋SL広場へ訪れた。その際に、「結局、横山さん、(仲裁料は)幾ら貰ったの」と聞けば、結構な金額になったとほくそ笑んでいたのを思い出す。
「横浜の団体への振り込み」は実は横山の実弟の口座。その実弟に聞くと手数料は過分な額だったという。横山が掠め取ったカネの殆どは、地元の場末の飲み屋に飛んでった。横山らしいが、まぁ間接的には経済効果には繋がったということか。呵呵。2011/10/29記
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